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「薫は私のよ。薫は責任感が強かった。だから自分が許せなくて、どこかで自殺してるのかもしれないわね」
心にもないことを言った。私はそれだけ追い詰められていたのだ。
「やめて。やめてよ」
百合は泣き叫び部屋を飛び出した。
後に残ったのは虚しさだけだった。
優香は申し訳なさそうに私の肩に触れた。
「ごめん。私が馬鹿なこと言ったからこんなことに……」
私は怒りからか手を振るわせて首を横に降った。
──それから数日後。私の務める会社の5階建てビルから百合は飛び降り自殺をした。
私はその時、部長に書類のサインをもらってる最中で、窓から逆さに落ちていく百合と目が合った。
それはスローモンーションのよう。
百合は私と目を合わせると口の端を上げて笑ったのだ。
まるで勝ち誇ったかのように。
くにゃりなのか、どしゃりなのか、鈍い音が響くと下から悲鳴が上がった。
「飛び降りだ」部署内でもそんな声が囁かれ、騒然とする。誰かが救急車を呼んでいる。
「美怜」
優香が駆けつけて私を、ぎゅっと抱きしめた。
「美怜のせいじゃない」
私は震えながら優香の肩に手を回した。
なぜ?
あなたには、愛の形がお腹にいたじゃない。
あなたにとって子供は物でしかなかったのだろうか。
「──大丈夫?」
帰り際、優香が心配して言ってくれた。家に泊まろうかっと誘われたが私は断り、家路に着いた。
ひとりになって考えたかったからだ。
くるるっとお腹が鳴る。
なぜだろうか心はショックを受けていても、体は食べ物を欲する。
私は適当にテレビをつけた。CMからクリスマソングが聞こえてくる。
もうすぐクリスマスか。
そんなことを思い、私は冷凍庫を開けた。
備蓄していたお肉がこれで最後。
なんだかとても寂しく感じた。
肉を解答しざっくりと肉を切る、ジャガイモ、人参を入れて煮込む。
今日の夕飯はシチュー。
シチューの香りが部屋を漂わせる。
冷きった体が、ほんのりと温まる。
辛いからこそ食べる。
何があったって、人は食べるからこそ生きていけるのだ。
「出来た」
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