愛するカタチ

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「──美怜、今日飲みに行かない」 「ごめんやめておく」 「なによ。付き合い悪いわね。男のこと引きずっててもしょうがないでしょう。飲んで食べてりゃね忘れられるわよ」 「いやぁ。それがね」 私は優香に紙のことを話た。実はあれからずっとキミの悪い紙が毎日の様に届くようになったのだ。 「なにそれ返せって。誰がそんな悪戯を……」 「わからないんだけど、どうしたらいい優香」 「まあ、ただの悪戯でしょう。少ししたら相手も飽きるわよ。ビクビクしてるから相手が面白がるのよ。ほっとけ。ほら、男を忘れるには酒よ」 優香はそう言うが本当にそんな理由で、こんな毎日手紙なんて投函してくるだろうか。 不安を感じながらも、優香は私の手を掴んで居酒屋へと連れて行った。 「人攫い」 それでも一人でいるよりは気が紛れる。 「ありがとう優香」 「酒。酒。なんか言ったぁ」 こいつただ飲みたいだけなんじゃないだろうか。 *** 「困るのよ」 悪戯は続いていた。それどころか、エスカレートしていた。 マンションの前に木工ボンドが撒かれていたのだ。 たまに来ては嫌みを言う大家さんに理不尽に怒られ私は謝る。 「すみません」 「恨みを買うようなことしてるんじゃないの」 ああ。この目。確実に男関係を疑っている。 以前、薫と手を繋いでエレベーターに乗ったとき、丁度、大家さんがいて、これだから若い子はっと言われた。 今どき手を繋いだだけでそんなこと言う人などいないと思う。 しかし、このマンションは会社からも薫の会社からも近い。 そんな訳で引っ越しを控えていたが……。 「マンション変えようかな」 冷たいバケツにたわしを浸し、取れない汚れを落としながら私は呟いた。 「痛っ」 ぱかりと(あかぎれ)が開き、妙に腹が立った。 「もう、やだ」 きゃはははっと近くの公園から甲高い子供の声が聞こえた。マンションのどこからかカレーの良い香りが漂ってくる。 皆、幸せそう。 流れ行く雲を見つめ私はため息を吐いた。 「夕飯はハンバーグにでもするか」
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