愛するカタチ

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口を挟んだのは優香だった。 「薫さんを取ったのはあんたでしょう」 「もとから薫ちゃんは私のモノよ」 薫ちゃん。 苛々が募る。 「あなた薫ちゃんをどこにやったの?」 「ちょっと何、意味わからない事言ってるのよ」 「部外者は黙ってて。薫ちゃん、前の彼女に会いに行くって言ってから帰って来ないの仕事にも来てない。あんたが隠してるんでしょう」 「美怜がそんなことするわけないじゃん。あんたに愛想でもついたんじゃないの」 部外者扱いされ優香はますます腹をたてる。 打ち合わせが終わった途端。私達のバトルが始まった。 どうやらお互い我慢の限界が来たようだ。 沸々と怒りが湧いてくる。 薫が抱いた女。 小さくて、女らしくて、計算高い女。 どこがいいのよ。 「返してよ」 返せ! それは私のセリフよ。 「あんたね。いい加減にしなさいよ。美怜はね薫さんに裏切られて傷ついてるの、訳のわからない事言ってるなよ」 勤務中なのを私達は、すっかり忘れてしまった。 「だって連絡がつかないもの。可笑しいでしょう。私の元に帰って来ないなんて、薫ちゃんが選んだのは私なんだから」 私の瞳が揺れる。 言い返したい。でも百合のお腹を見ると言葉が詰まる。 そこには薫との愛のカタチがあるから。 「だから、返して。返してよ。返して」 思い詰めてなのか、感極まってなのか、百合は叫んだ。この一ヶ月、百合は百合で悩んでいた。 私は突然のことに驚きもしたが、それよりも百合の言葉に、はっとした。 返せ? 毎日のように届く紙が目に浮かんだ。 「もしかして悪戯してたの、白取さん?」 ビクっと肩を震わす百合。 私は百合の髪を見た。 そうだ百合の髪は、もっと長かったはず。贈られてきた藁人形と髪を思い出す。 髪質が似てる。 「あの髪は白取さんなの」 ぐっと唇を引き結ぶ百合に私は確信した。
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