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「あんな嫌がらせ。なんでするのよ。意味わからない」
「だって、美怜さんが薫ちゃんを返さないから、薫ちゃんは私を好きなの、美怜さんじゃない。美怜さんじゃないんだから」
美怜さん!
ああ。薫が私の事、そう呼ぶから……。
震えながら涙する百合。
沸々と、どす黒い怒りが湧いてきた。
「本当は薫に愛されてないんじゃない」
「そんな事ない。私のお腹には薫ちゃんの子供がいるの。なによ。薫ちゃんに何度も寝言で美怜さんを呼ばれてるからって、私のお腹には愛の結晶がいるんだから。私達の愛のカタチ。薫ちゃんは私を愛してるの。あなたには無いでしょう。」
私は言葉を飲み込んだ。
瞳が熱くなる。
子供。
カタチ。
ぐっと悔しさで唇を噛んだ。
優香はたまり兼ねて口を挟む。
「あんたね。奪っといて、それを言うわけ」
「優香」
「五月蝿い」
「なんだと、だいたいさ帰って来ないって言うけどさ。薫さん、心が弱そうだったじゃない。美怜を傷つけて責任を感じて自殺でもしたんじゃないの」
その場が凍りついた。
優香は、しまったっと言いたげにした。
「ごめん。美怜。言い過ぎた」
「いいの」
「良くないわよ。薫ちゃんがそんなことするわけがない。だって私を置いて逝くなんてあり得ないもの、美怜さんを傷つて耐えられなくなって、私から逃げた? 絶対無い。そんなことする訳がない。薫ちゃんは私を……」
ポロポロと泣き出す百合に、私は薄ら笑った。
抑えてつけていた醜い感情が裏から出てくる。
よくも奪ったな。
「愛してる? ただ子供が出来ただけでしょう。薫は私を好きよ。お揃いのピンキーリングまだ外して無かったでしょう」
百合は傷付いた顔をする。
「私の方が、愛してるし、愛されてるわ」
「違う。薫ちゃんへの思いは私の方が大きいんだから」
そう言って百合は無言でお腹を擦った。
かっと頭に血が登った。
「ふふふ。愛だのこうだの言うなら、薫の後を追ったら」
私は溜め込んでた怒りが爆発した。うっと泣きながら血走った目で百合を睨んだ。
子供が出来たんだからしょうがないっと言い聞かせてきた、でも、もう限界だ。
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