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酒を交わしながら、不安を吐露する。
私はどうしたら演技が上達するでしょうか?
次第に涙が溢れ、影の監督と呼ばれる彼に抱かれることで保身を図ろうと服を脱ぎ始めた。
そのとき、昭明はやにわに立ち上がり、「そこのコップを寄越せ」と指示した。
彼女は命ぜられた通り、テーブルに伏せてあった未使用のコップを渡した。
すると彼は、「俺の演技を見ろ」と言い、喜怒哀楽やその他複雑な感情をアドリブでやってみせた。
マイク代わりのコップには、涙や汗や唾などが溜まっていく。あまりの凄さと汚さで女優は怯んでしまった。だが、圧倒的な演技だ。とても即興とは思えない。それだけは本当に心から感動した。
すると昭明は、そのコップを女優に手渡し、「飲め。飲んだら名優になれる」と言った。「理由を訊かずに飲み切れば名優になれる。さもなくば埋もれて消えるだけだ」と。
女優は死ぬ覚悟でそれを飲み干した。
そして『大女優』への階段を駆け上がり、現在も圧倒的演技力で観客を魅了している。
彼女は過去の取材で、絶技と称される演技の秘訣について訊かれたとき、こう答えた。
「うふふ。私は演汁を飲んだから、今があるのですよ。その根性こそが秘訣でしょうね」
(了)
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