のの字坂の女

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「なんなんすか?そのジャイアントとかいうの」  暫く呆然としていたアタルが、口を開いたのは、ごく当たり前の質問であった。  少し窪地になっている、ループ坂の真ん中にある公園に少しだけ涼しげな風が吹いてた。  中島浩子は、目の前のブランコを見て、そのままの視線で喋りはじめた。 「私の推測だと、私たち以外の人間はどこか遠い星に移住してしまった後で、残された人間は徐々にこの世界に送り込まれているんじゃないかと思うの」 「するとここは・・・」 「作られた世界。つまりいらない人間ってこと」 「なるほど、でも、ここがいらない人間を集める場所だったら、大がかりすぎるような気もするんだけど」  中島浩子は、アタルの疑問に薄ら笑いを浮かべて、自分のこめかみを人差し指でトントンと軽くたたいて、見せた。 「ここ、これは大きな脳みその中で、つまりそれが「ジャイアントヘッド」の意味よ、何故か私たちの頭にその言葉が住み着いている」  なるほど、ありがちと言えば、ありがちな説かもしれないな、と、アタルはぼんやり思いを巡られてみた。  待てよ、すると俺たちは地球を捨ててどこかの星に移住した人類のあぶれ者って訳か・・・  だとすると、わざわざあぶれ者を巨大な脳みそにデータとして送る意味があるのか?  あぶれ者はあぶれ者で、地球に放置しておけばいいんじゃないのか?  しかし、その疑問を目の前の女性に言ってしまったら、場が白けるような気がして、アタルは黙って納得したように見せていた。  よく考えれば、この状況で場が白けようが、疑問をぶつけ、納得いくような答えを導き出せばいいものを、アタルはこんな世界に放り込まれてまで、他人に気をつかっていた。  そんなアタルの思いを察したのか、中島浩子はふーっと息を吐き、アタルの方を見た。 「あくまでも一つの説よ」  その言い方は、アナタも文句があるのなら持論の一つでも言って見なさいよ、と言わんばかりであった。  
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