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「じ、人面魚……ですか?」
「そうよ。お魚の顔がね、人の顔をしてるんですって」
「それは知ってます」
「いるかしら?」
「いません。そんな話、この池では聞いたことがありません」
デート気分も、いきなり現れた人面魚に一気に吹っ飛ばされた。
だが、なぜそんなことを言い出したのか、その真意が知りたいばかりに、レオは再度問いかけた。
「見たいんですか? 人面魚?」
「うーん……私ね、ほとんど屋敷の中で過ごしてたから、本を読むことが多くて、中でも図鑑が好きだったの。図鑑を見ているとね、屋敷の中にいても、まるで広い外の世界を見ている気分になれたから……」
池の中を見つめ呟いた結月の声は、どこか寂しそうだった。
きっと結月は、自分が知らない外の世界のことを、本を読むことで知ろうとしていたのだろう。
まるで、塔の中に閉じ込められた、お姫様のように──
「花の図鑑とか動物の図鑑とか、いろいろ読んだわ。いつか本物を見れたらいいなとか、思いながら……だけど、図鑑もある程度読んでしまって、たまにマニアックな本に手を出すことがあったの。妖怪図鑑とか! そしたら、思いのほか妖怪に詳しくなってしまって、一反木綿の出身地が鹿児島ってことまで、覚えてしまったわ!」
(なるほど、だから人面魚か……ていうか、妖怪に出身地とかあったのか)
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