執事と恋心

1/4
前へ
/1778ページ
次へ

執事と恋心

「こちらが、五十嵐さんの部屋です」  その後、一通りの説明を終え、屋敷を案内されたレオは、別館にある空き部屋に通されていた。  お嬢様がいる本館とは別に建てられた、二階建てのこの別館は、使用人専用の屋敷だ。  20帖ほどの部屋の中には、既にベッドや冷蔵庫などの生活必需品が完備されており、召使いの部屋にしては中々に広く、とても綺麗な部屋だった。 「トイレは完備されています。お風呂は、男性寮共同の物を使って下さい。食事は、まかないが出ますので、所定の時間に他の使用人達と一緒に摂っていただきます。必要のない日は、事前にシェフの冨樫(とがし)にお伝えください。他に何か、ご質問はございますか?」 「食事は、使用人だけでいただくのですか?」 「はい。朝食の後に朝礼も行いますので」 「そうですか……では、お嬢様は、いつもお一人でお食事を?」 「そうですが。それが、なにか?」 「いえ、旦那様も奥様も、あまりこの屋敷にお立ち寄りにはならないと、お聞きしたもので」 「そうですが。だからと言って、使用人が、(あるじ)と共に食事をとるなど」 「そうですね……失礼。少し気になっただけです」  ニッコリ笑いかけると、レオは、その後、部屋の奥へと進み、持参したトランクを机の上に置く。 「五十嵐さんは、二十歳とお聞きしていますが」  
/1778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

179人が本棚に入れています
本棚に追加