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すると、今度は矢野の方から話しかけてきて、レオは再び視線を向ける。
「はい、そうですが」
「では、一つご忠告を」
じっと真一文字に結んだ矢野の口が、重く言葉を放つ。
「決して、お嬢様に恋心を抱かぬように」
「…………」
そのご忠告に、レオは眉ひとつ動かさず、矢野を見つめた。
使用人や執事が、屋敷の主に恋心を抱くなど、あってはならないこと。
だが、そんな"当たり前"のこと、あえて言われずとも、暗黙の了解として誰もが周知しているべきことだった。
「……なぜ、わざわざ、そのようなことを?」
「あなたの前任の執事が、お嬢様に恋心を抱き解雇されました。お嬢様も、もう18です。年頃の女性と近い距離で働くとなれば、執事とはいえ、邪な感情を抱かないとは限りません。もし、また同じようなことがあれば、お嬢様がどんなにお嘆きになるか。なので、念の為ご忠告を」
「そうでしたか。なら、もう少し年配の男性を雇った方が良かったのでは? なぜ、私のような若い男を」
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