デート

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 ──知らなかった。  だが、正直、妖怪の知識はあまり必要ないと思う。 「あら、あれは何かしら?」 「……!」  すると、今度は、遊歩道の脇道に停るトラックを見て、結月が再び声を上げた。  見れば、そのトラックの前には、パンの種類が書かれたメニュー表が出ていて、中にあるショーケースには、焼きたてのパンが綺麗に陳列されていた。 「あー、あれは、移動販売のパン屋ですよ」 「え、パン屋さんが移動してるの!?」  初めてみたのか、興味津々に問いかけてきた結月をみて、レオは小さく笑みを浮かべた。 (相変わらずだな、こういう世間知らずなところは……)  あの頃もそうだった。屋敷の中からあまりでられなかった結月は、外の世界のことを、あまりよく知らなくて、特段面白くもない、レオの話を楽しそうに聞いていた。  それに、こうして寄り道をしたことすらない結月だ。きっと、移動販売のパン屋を目にする機会も、あまりなかったのだろう。 「食べますか?」 「え、食べる? ここで?」 「はい」
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