お嬢様と箱

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「……お嬢様、前から気になっていたのですが、その箱には、一体何が入っているのですか?」  すると、当たり前のように、その箱を手に取った結月を見て、恵美が、不思議そうに問いかけた。  お嬢様が、毎日かかさず手に取る『箱』  正直、中身が気にならないといえば嘘になる。 「指輪でも入っているのですか?」 「ふふ、気になる?」  すると結月は、恵美の前に箱を差し出し、その蓋をカポッと開けて見せた。 「え?」  だが、その箱の中をみて、恵美は目を丸くする。 「ふふ、驚いた? この箱、空っぽなのよ?」 「か、空っぽって!? じゃぁ、お嬢様は、(から)の箱を見て、あんなに嬉しそうにしてたってことですか!?」 「あら? 私、嬉しそうだった?」 「はい、それはそれは、嬉しそうに……ですから私は、てっきり、どなたかからのプレゼントで、中に大切の物が入っているとばかり」  そう、結月はこの箱を、とても愛おしそうに見つめていた。  それなのに、まさか中身が空っぽだなんて…… 「そうよね。おかしいわよね? (から)の箱をみて喜んでるなんて」 「あ、いいえ! おかしいなんてことは……!」 「いいのよ。だって、私にも分からないの」  
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