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「わからない?」
「うん。この箱が、いつからあって、中に何が入っていたのか、全く覚えてないの。でも、不思議とこの箱を見ていると元気が出て……だから、なかなか手放せなくて」
すると結月は、その箱を優しく握りしめた。
とてもとても、大切なものだとでも言うように──
「そうなんですね」
「変な話でしょう?」
「いいえ、変だなんて! でも、中には何が入っていたのでしょう?」
「そうね。サイズ的にはアクセサリーだと思うけど……でも、改めてみたら、うちにはあまり似つかわしくない箱よね?」
「まぁ、どこでもありそうな紙製の箱ですからね。阿須加家のご令嬢へのプレゼントにしては、ちょっと……あ、でも、物の価値は、見た目や金額ではありません! お嬢様が大切だと思うなら、それは、どんな高価な宝石よりも価値のある」
「ふふ。そうね。ありがとう、恵美さん!」
拳を握り力説する恵美をみて、結月は嬉しそうに微笑んだ。
すると、恵美は、香り豊かなモーニングティーを差し出しながら
「お嬢様、お茶をどうぞ。お砂糖はいつも通り、二ついれてあります!」
「ありがとう」
「それと本日、新しい執事が、この屋敷にやって参ります」
「執事?」
「はい。それも、かなりのイケメン執事さんですよ! お嬢様が、学校から戻られましたら、挨拶に伺わせますので、そのつもりでいらしてください」
「えぇ、分かったわ」
「では、私はお召し物を、お持ちしますので」
一礼した恵美が、部屋の奥にある小部屋へと消えていく。
すると、結月は、淹れたてのモーニングティーを口にしながら
(執事ってことは、男性が増えるのね……今度は気をつけなくちゃ)
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