178人が本棚に入れています
本棚に追加
/1778ページ
✣✣✣
──ピンポーン。
その後、結月が学校に行き、数時間がたった頃、屋敷の前に立った青年は、高い塀の外にあるインターフォンを鳴らしていた。
阿須加家は、この町・星ケ峯では、かなり名の通った名家だった。
広大な敷地の中に佇むのは、一軒の西洋風の建物。
ヨーロッパの洋館のような外観から、中にはアンティークの家具や食器が所せましと並んでいるような、そんな印象をうけた。
そして、この屋敷に住む一人娘・阿須加 結月の父親は、明治から続く老舗リゾートホテルの社長だった。
手を変え品を変え、今は、手広くやっているらしいが、数年前まで栄華を極めていたこの阿須加家も、少しずつ衰退し始めていると聞く。
『どうぞ、お入りください』
暫くして、インターフォン越しに声が響くと、格子状になった門が自動的に開きだした。
トランクを手に敷地の中に入る。
すると、数分、進んだ先に、屋敷の玄関が見えてきた。
両開きの木製の扉だ。
そして、その玄関の前では、メイドが二人、青年を待ち構えていた。
最初のコメントを投稿しよう!