お嬢様と箱

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 ✣✣✣    ──ピンポーン。  その後、結月が学校に行き、数時間がたった頃、屋敷の前に立った青年は、高い塀の外にあるインターフォンを鳴らしていた。  阿須加家は、この町・星ケ峯(ほしがみね)では、かなり名の通った名家だった。  広大な敷地の中に(たたず)むのは、一軒の西洋風の建物。  ヨーロッパの洋館のような外観から、中にはアンティークの家具や食器が所せましと並んでいるような、そんな印象をうけた。  そして、この屋敷に住む一人娘・阿須加 結月の父親は、明治から続く老舗リゾートホテルの社長だった。  手を変え品を変え、今は、手広くやっているらしいが、数年前まで栄華を極めていたこの阿須加家も、少しずつ衰退し始めていると聞く。 『どうぞ、お入りください』  暫くして、インターフォン越しに声が響くと、格子状になった門が自動的に開きだした。  トランクを手に敷地の中に入る。  すると、数分、進んだ先に、屋敷の玄関が見えてきた。  両開きの木製の扉だ。  そして、その玄関の前では、メイドが二人、青年を待ち構えていた。
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