お嬢様と箱

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「お待ちしておりました」  メイド長の矢野(やの) 智子(ともこ)が深々と頭を下げると、その隣にいた相原 恵美も同時に頭をさげた。    すると青年は柔らかく微笑み、同じように頭を下げる。 「お出迎え、ありがとうございます。本日より、この屋敷の『執事』として、お嬢様にお仕えすることになりました『五十嵐(いがらし)レオ』と申します」 「奥様より伺っております。私は、メイド長の矢野 智子です。この後、いくつか説明をした後、屋敷の中を案内致します。宜しいですか?」 「勿論」  矢野の指示を快く承諾すると、レオは、恵美に軽く会釈し、矢野のあとに続いた。  だが、そんなレオの後ろ姿を見つめ、恵美が頬を赤らめる。 (じ、実物は、更にイケメン……っ)  恵美は先日、矢野から、彼の履歴書を見せてもらっていた。  履歴書に添付された写真も、なかなかのイケメンだったが、実物は、それを更に凌駕(りょうが)していた。  少し長めに整ったサラサラの黒髪に、均整の取れた身軽そうな体躯。  身長もスラリと高く、立ち姿も、とても様になっていた。その上、どこか甘く品のある顔立ちと、耳に心地よい声。  仕事ぶりはまだ分からないが、あの見た目なら執事特有の燕尾服も、さぞかし似合うことだろう。 (五十嵐さんて、確か、私と同い年だったよね?)  恵美はそれを思い出し、再び頬を赤くする。  レオの年齢は、恵美と同じ二十歳。  その上、まさか、あんなイケメンと一緒に、住み込みで働くとことになるなんて……! (ひゃ~、慣れるまで大変そう~!)  恵美は、頬を赤らめつつも、自身の胸がドキドキと脈打つのを、必死になって押さえたのだった。
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