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「シルビア、そんな目でオレを見ないでくれ。辛くなるじゃないか。オレだっておまえと離れたくないんだ。それだけは分かってくれ。な、頼むよ……」
オレの言葉が届いているのにシルビアは何も言わなかった。ただ、家の前でじっと佇んでいる。
あんなに真っ白だった肌は年齢とともにくすみ、付き合いだした頃の輝きはどこにも見当たらない。そんなシルビアがまた可哀想で、不憫で、オレは彼女の体を撫でてやることしかできなかった。
(ありがとう、マコト。だけどもうお別れね。寂しくなるわ)
そんな声が聞こえてきたような気がした。
「オレに甲斐性がないばっかりに……」
不意にシルビアの姿がにじんで見えた。おや老眼かな――と思いつつ何気なく目をこすると、今度ははっきり見えた。
(泣かないで、マコト。わたしも泣きたくなるじゃないの)
「ごめんよ、シルビア」
紅葉が目立ち始めた、ある日曜日のことだった。
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