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「深田、ちょ、こっち来い。」 強引にスーツを引っ張られ、思わずイスのキャスターに足を引っ掛ける。 ただ上司が怒っていることだけが肘の部分から伝わってきて、僕の体温を奪っていた。今月で何回目だろうか。 案の定、僕が呼び出されたところはこの会社で怒られるための部屋と言っても過言ではない小会議室だ。 真っ白に統一された机やイス、洗練された空気は最早病院を連想させる。 「これは、何だ?」 不意に松井さんが振り返る。 目には呆れが八割怒りが一割といったところだ。 残りの一割を考えようとしたが圧に負けて目を逸らした。 そして目に入るのは松井さんの持つ紙の束。 パラパラと風でめくれる。 珍しく窓が開いていて風が僕の髪の毛を撫でる。 「おい…これは何だって聞いてんだよ」 僕の顔を覗き込む。 「すみません。」 上手く声が出せただろうか。 風にかき消されて届いてないのではないか。 「しっかりしろよ……お前この仕事向いてないんじゃない?」 そう言って僕にその束を押し付ける。 僕は必死に紙が落ちないように両手で胸を押さえた。涙もこぼれ落ちないように抑えた。
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