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家に帰っても誰も待っていない。
夜な夜な電話をする相手もいない。
四年制大学を出て一年この会社で働いているから…二十三になるな。
前に彼女が居たのは二年前……
そんなことをつらつらと考えながら駅へ向かった。
なんだか様子がおかしいのは薄々気づいていた。
ホームに降りた時にその違和感は最高潮に達した。みんなが何か口を動かしているのに静まりかえっている。
目線の先には、
中肉中背の男。
それも、妙に尖ったナイフを持った。
その男の目線の先には、
既に血に濡れたワンピースを着た女が倒れていた。
男は逃げる気もない。
けど誰が捕まえる訳でも無く、時間が止まっているようだった。
女はもう死にかけだった。
女と男の周りにはぐるっと円を描いたように間が空いている。
僕を除いて……
僕はうつらうつらその円に入ってしまったのだ。
階段を下りて顔を上げると殺人犯とばったり。
これが現実だ。
計画的でもトリックモノでもない。
ただそこに僕がいたんだ。
それだから男はその血まみれのナイフを握りしめて僕を目掛けて走ってきた。
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