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目を覚ますと、いや目は無いはずだ。 そう、気がつくと僕はどこかに居た。 あたりは真っ白な光で包まれていて、薄い霧がかかったようだった。 壁も床も天井もない。 きっとここが天国なのだろう。 僕は死んだ。 身体はないけれど、心はここにある。 不思議な感覚 「やあ。」 どこからか声が聞こえた、ような気がする。 「そうだよ。僕はここに居る。」 姿は見えないのにやはり声がする。 男の中でも僕は高い方なのに、それよりも高い声だ。 少年だろうか。 「僕は姿を持たないよ。」 諦めて顔を動かすのをやめる。 何もない空間を見つめてもつまらない。 「僕は天使だ。 名前は無い。一個体ずつに名前をつけようとするのは人間だけだよ。好きに呼べばいい。」 まるでマニュアルを読んでいるかのようだ。 「君も自己紹介をしたらいい。」 自分よりも年下の男に指図されるのは好きではないが、不思議と嫌な感じはしない。 「ふ、かだ、みなとです。」 口は無くても喋ることは出来るのか… 「俗に言う言霊だね。」 心も読めるのか。 天使とは実態が掴めないものだ。 「そういえば、君は殺されたんだってね。」 天気の話のようなトーンで話す。
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