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わたしは耳に当てたスマホを強く握りながら同窓会はあまり気が進まないなと思った。
その時、わたの腕を真由香が「ねえ、亜沙美ちゃん」と言いながらグイグイと引っ張ってきた。
わたしは振り返り、
「あ、真由香まだ居たんだ」と言うと真由香はわたしの顔をキッと睨み付けてきた。
「居たのって、何も言わないで電話しているから待っていたんだよ」
「真由香、ごめんね。先に行ってて言うの忘れていたよ」
「あのね……忘れないでよね。お腹がぺこぺこだよ~」
そう言って真由香はぷくぷく頬を膨らませる。
『おい、亜沙美聞いているのか?』
電話口からは松木の声が聞こえてきた。
「あ、うん同窓会の話でしょ」
「ねえ、亜沙美ちゃんってば早く行こうよ」
真由香がわたしの腕をぐいぐーいと引っ張る。
『同窓会と小説のことだよ。あ、なんか真由香の声が聞こえてくるな。また、後で連絡するよ。じゃあな、亜沙美先生』と言って松木は一方的に電話を切った。
わたしは、カバンにスマホを仕舞い、「真由香ごめんね」と言って笑顔を作った。
「電話の相手は松木なの?」
「うん、そうだよ」
「やっぱり~小説のことだよね」
「うん、全然書けていないからね」
「そっか、大変だね頑張るんだよ。それはそうとお腹が空いたよ。あ、チラシの定食屋に行く時間がないよ」
真由香はスマホの画面をグイッとわたしに見せてくる。見るとお昼休憩が終わるまで三十分しかない。真由香には悪いけれど、わたしはホッとした。
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