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家に帰り机に向かったけれど、小説のアイデアなんて一つも浮かんでこないのでペンを投げ捨てた。
「ああ、もう嫌になる。わたしって才能ないのかな」
わたしは、両手で頭をかきむしった。思い浮かんでくるのはオレンジ色の提灯と『ご飯屋』と書かれた暖簾にそれから真っ赤に染まった血溜まりばかりだ。
もう一層のことこれを小説にしようかななんて考えてみたけれど、ダメダメ絶対にダメだ。考えただけでゾクッと寒気がしてきた。
その時、机の上に置いてあったスマホがぷるぷると振動した。
画面を見ると松木からの電話だった。うげー出たくないなと思いながら電話に出た。
『亜沙美先生こんばんは』と嫌みな声が聞こえてきた。
「……何かご用でしょうか?」
『何かご用でしょうかじゃないんだよ。ぽんこつ』
「あ、また、ぽんこつって言った」
『おっ! ぽんこつじゃないと言うことは亜沙美先生素晴らしいアイデアが浮かんだのでしょうか?』
「……それは」
『それは? どんなアイデアでしょうか?』
松木はわざとらしくわくわくした声を出す。
「アイデアはありません」
『はぁ? アイデアはないだとぽんこつーーーー!』
松木の大きな叫び声で耳が痛くなる。
「あ~もううるさいよ。オレンジ色の提灯だよ」
わたしは、思わずオレンジ色の提灯と口走ってしまった。
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