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『えっ? オレンジ色の提灯ってまさかのアイデアかよ。亜沙美』
電話口の松木は興奮した声で聞いてくる。
「あ、ううん、違うよ。なんでもないよ」
『いや、オレンジ色提灯良いかもしれないぞ。よし、それにしろ。亜沙美先生』
松木の声は弾んでいるけれど、オレンジ色の提灯なんてとんでもない。絶対に嫌だ。
『おい、亜沙美聞いているのか?』
「オレンジ色の提灯は却下だよ。言葉に出てしまっただけだから……」
『はぁ? でもさ、オレンジ色の提灯から始まるストーリーでも考えたらいいんじゃないか?』
なんて松木は乗り気になっているのだから信じられない。
「オレンジ色の提灯は考えるだけで嫌な気持ちになるから止めておくよ」
『どうしてだよ。オレンジ色の提灯良さげなんだけどな。あ、そうだ、明日打ち合わせをしようぜ。じゃあいつもの喫茶店でね』
「あ、松木」とわたしが言った時にはすでに電話は切れていた。
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