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「ふふっ、お昼休みが楽しみだよ」
真由香はわたしが震えていることに気づきもせず踊るような足取りでやって来たエレベーターに乗り込んだ。
わたしは職場がある五階のコールセンターに着くまで真由香が手にしているチラシをちらちらと見ては何とも言えない嫌な気持ちになった。
五階でエレベーターから降りていつものように入口にずらずらと並んでいるロッカーに私物を入れる。
透明のビニールバッグを取り出しペットボトルのお茶や財布や化粧ポーチなど業務フロアに持ち込み可能な物をぽんぽん詰め込む。
「毎回思うんだけどコールセンターってセキュリティが厳しくて面倒くさいよね」
真由香がぶつぶつ文句を言いながらわたしと同じように持ち込み可能な物をビニールバッグにぽんぽん詰め込んでいる。
「うん、面倒くさいよね」
そうなのだ。わたしの勤務している通販のコールセンターはカメラ機能を利用して個人情報が漏洩されないようにスマホなどの持ち込みは禁止になっている。
かなり厳しくて業務フロアに持ち込みしたのが見つかるとスマホを一日没収されたりするのだ。
それはそうと真由香がオレンジ色の提灯とオレンジ色の暖簾がかけられている定食屋のチラシをロッカーに仕舞うのを見たわたしは絶対に断らなくてはと思った。
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