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婚活女子
カタカタ……
薄暗い和室に、響くワープロ。
インターネットでチャットをして、気の合うパートナーを探す「シャ・トロワ」に入会したばかりの花ヶ前 真由美は、年頃の男子と話すことに熱中していた。
35歳になるまで、男性とつき合ったことがない。
仏様のように細目で穏やかな「ほへ顔」女子だからだろうか。
一週間に2人ずつ、データマッチングした相手が表示される。
顔写真、職業、家族構成、住所、年収、一言コメントなど、課税証明書と戸籍抄本で照合するからウソはない。
1人の男性に目を留めた。
「ほへ顔男子 ━━ 」
男は横線を2本引いた、見事な細目である。
驚くほど、観音様に似ていた。
早速チャットに誘う。
「はじめまして。
花ヶ前 真由美です。
プロフを拝見しました。
もしよろしければお話しませんか」
始めはこんな感じで相手の出方をみる。
「こんばんは。
志保 宗親です。
チャットだけではアレですから、お会いして話しませんか」
早速会う約束を取りつけた。
今週末、午前中にお互いの中間駅改札で。
ごく普通の設定だった。
ほへ顔は、印象に残りにくい。
真由美は宿命的に、普通の女子人生を生きてきた。
美人ではないが、ブスというほどでもない。
学校の成績は、秀才ではないし落ちこぼれてもいない。
いつも平均点くらいだった。
スポーツも、一応満遍なくできる。
だが、活躍した記憶はない。
こんなほへ顔女子に目をつけた、ほへ顔男子はどんな男か気になってきた。
「きっと、何もかも普通なんじゃないかな」
妙な期待に胸を膨らませて、チャットで軽く婚活の話などをしていた。
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