幸せの予感

1/1
前へ
/8ページ
次へ

幸せの予感

 宗親は冷静を装っているが、結構惚れっぽい。  期待を裏切られたときに、傷つくことを畏れて冷静な態度をとるところもあった。  戻ってきた真由美の顔が、こころなしか微笑んでいるように見えた。 「ねえ。  宗親さんは理想の家庭とかあります? 」  いきなり下の名前で呼んだことに驚いたが、核心を突いてきた。  もしかして、脈があるのかと思い始めた。 「え……  ええ。  もちろんありますよ。  結婚したら、しばらく2人で過ごしたいかな。  それで、子とも2人くらい育てる感じで」  あいまいだった将来のビジョンが、急に口を突いてでた。 「へえ。  いいですね。  婚活してるんだから、考えますよね」  それから、仕事のことや近所の人のことなど、取り留めなく話した。 「あっ。  そろそろ1時間ですね」 「何だか、あっという間だったわ」 「じゃあ、行きましょう」  窓の陽射しが温かく、木目調のテーブルが映えて見えた。  入ったときには気づかなかった、観葉植物やショーケースのケーキなどが色鮮やかだった。  駅に向かう道すがら、 「三の割駅で降りたの初めてで。  結構お店とか多いんですね」  などと街並みを眺めながらのんびり歩いた。 「それじゃ、今日はありがとう」 「こちらこそ」  穏やかな笑顔を交わし、別々のホームへ別れて行った。  電車に乗り込むと、スマホを開きメールを打つ。  これも、雑誌に書いてあったアドバイスだった。  すぐにメールでお礼をして、印象アップするのである。  翌日。  真由美からメールが届いた。 「私、ラナ・シーの曲が好きなんです。  こんな女子をどう思います? 」 「ラナ・シー、僕も好きだよ」  と返しておいたが、さっぱりわからなかった。  さっそく調べて聴いてみると、悪くない曲だった。  真由美は異世界に住んでいたかのように、さまざまな驚きと発見をもたらしていく。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加