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幸せの予感
宗親は冷静を装っているが、結構惚れっぽい。
期待を裏切られたときに、傷つくことを畏れて冷静な態度をとるところもあった。
戻ってきた真由美の顔が、こころなしか微笑んでいるように見えた。
「ねえ。
宗親さんは理想の家庭とかあります? 」
いきなり下の名前で呼んだことに驚いたが、核心を突いてきた。
もしかして、脈があるのかと思い始めた。
「え……
ええ。
もちろんありますよ。
結婚したら、しばらく2人で過ごしたいかな。
それで、子とも2人くらい育てる感じで」
あいまいだった将来のビジョンが、急に口を突いてでた。
「へえ。
いいですね。
婚活してるんだから、考えますよね」
それから、仕事のことや近所の人のことなど、取り留めなく話した。
「あっ。
そろそろ1時間ですね」
「何だか、あっという間だったわ」
「じゃあ、行きましょう」
窓の陽射しが温かく、木目調のテーブルが映えて見えた。
入ったときには気づかなかった、観葉植物やショーケースのケーキなどが色鮮やかだった。
駅に向かう道すがら、
「三の割駅で降りたの初めてで。
結構お店とか多いんですね」
などと街並みを眺めながらのんびり歩いた。
「それじゃ、今日はありがとう」
「こちらこそ」
穏やかな笑顔を交わし、別々のホームへ別れて行った。
電車に乗り込むと、スマホを開きメールを打つ。
これも、雑誌に書いてあったアドバイスだった。
すぐにメールでお礼をして、印象アップするのである。
翌日。
真由美からメールが届いた。
「私、ラナ・シーの曲が好きなんです。
こんな女子をどう思います? 」
「ラナ・シー、僕も好きだよ」
と返しておいたが、さっぱりわからなかった。
さっそく調べて聴いてみると、悪くない曲だった。
真由美は異世界に住んでいたかのように、さまざまな驚きと発見をもたらしていく。
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