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「原発が危ないって」
玲奈は画面をスクロールしながら言った。
「どういうこと?」
「冷却できなくなって、温度が上がっているらしいわ」
「それだけ? 電力会社は、原発は安全な発電所だっていつも言うわよ。壊れたところでたかが知れているのでしょ?」
春花にはピンとこなかった。原発が冷却できずに壊れたところで、自分に何の影響があるだろう。
「そうだけど、爆発したりしないのかしら?」
「地震よりましでしょ。あの原発は出来てからこの方、事故など起きたことがないのよ。これからだって起きるはずはないじゃない。私たちが心配することじゃないわ。遠くの原発よりも、目の前の荒れた部屋の片付けが重要よ」
「それもそうね」
玲奈が仏壇の隣に置いた石を手に取った。
「これは何かしら?」
「それね。仏壇の下にあったのよ。そのノートと一緒に」
玲奈がノートを手にした。
「おじいさんのノートね」
彼女は最初のページをめくると声を上げた。
「うわっ、昔の漢字ね。読めないわ」
ノートを閉じるとチキスで留められた書面に目を向けた。
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