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「希望をかなえてくれる可能性は否定できないって書いてある」
玲奈が笑みをたたえた。
「そんなことより、掃除を終わらせましょう。手伝って」
外に出て、使っていなかった井戸が使えないものか、試してみた。掃除をするためには水が必要なのだ。古い手動のポンプは錆びついていて1人では動きそうにない。
「玲奈。手伝って」
玲奈が不服そうな顔をして表に出てきた。報告書を読むのを邪魔されて不快だと言わんばかりだ。
「これを動かすの? まだ使えるのかしら?」
母娘は左右に分かれてポンプのレバーを握った。
「冷たい」
玲奈がぼやきながらも全身をバネにしてレバーを押した。
「骨董品めぇ。動け」
気合を入れるとギギッと音がしてレバーが動いた。
レバーを何度か上下させると、ポンプの口からとろとろと水が流れ落ちる。それは赤く錆びた水で、その表面には油のようなものが浮いている。
「これじゃ使えないわよ」
玲奈が顔をしかめた。
「大丈夫。もっと、どんどん出すのよ」
錆びが取れて動きやすくなったポンプの操作を玲奈に任せて、春花は楽しそうに流れ落ちる水を見ていた。
「よどんだ水を出してしまえば、きれいな水が出るわよ」
「本当に、出るの?」
玲奈が首を傾げる。
「信じなさい。必ず使えるようになるわよ」
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