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玲奈が黒曜石の広い面を両手で挟むように持ち、右手、左手と順番にその表面を、円を描くようになでた。
昼間はただの石の塊にしか見えなかったものがぼんやりと黒い光を発し、彼女の手に吸い付いたように見えた。光は明滅を繰り返し、やがて石の側面に線を描いた。そこを割るように。
側面の黒い光の筋が太さを増していく。ほどなく、黒い光の筋は石と石の間に生じた隙間が作る影だとわかった。
まるで黒曜石が自分の意志で開いたようだった。
「開いた……」
母娘の声がそろった。2人は顔を見合わせ、小さくうなずいてから〝希望の書〟に目線を向けた。
2人はお互いに相手の心臓の鼓動を感じていた。大冒険に挑む子供のように。
厚さ2センチほどの場所で板状の石が開いた姿は、まさに本そのものだった。中には、報告書に添付されていた写真と同じ古代文字が並んでいる。
2人には、彫られた文字を読む知識はない。そこで、すぐに次のページ、次のページとめくってみる。石のページは5ミリほどの厚さだ。
当然そこにあるのも古代文字だけなのだろうと思い込んでいたのだが、最後のページには日本語も刻まれていた。
日本語の文字の一つは棚橋猛という玲奈の曾祖父の名で、もう一つは山本直人という人物の名前だった。そして春花の亡き夫、棚橋学の名があり……。
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