シンサイ

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「わかり難い文章ね。学者さんって、なんでこんなに回りくどい文章を書くのかしら」  報告書を読んだ玲奈がため息をついた。 「難しい文章の方が、ありがたく聞こえるからよ」  春花は笑った。そうしてから、自分はいつからこんな皮肉屋になったのだろう、と自分が嫌になった。  玲奈が報告書に眼を落し、再び読み始めた。 「1ページ目は、〝神の力〟についての記載である。……神は宇宙と共にあり、神を敬い、讃えよ。その者は報われるであろう。その報いは永遠の宇宙に及び、成さざるものはない。神に望む者は、己の血をささげ全霊を持って望むべし。神はここに全てを記録し、神と共にあるものを祝福する。……2ページ目は、〝神の怒り〟についての記載である。神を恐れ、神に従え。従わぬ者は祟られるであろう。その祟りは永遠の宇宙に及び、成さざるものはない。神を恐れ遠ざけるものはただ一つ、死を賜る。……3ページ目は、〝人の欲〟についての記載である。人は欲深きものなり。その欲を満たしては滅びるであろう。その欲を捨ててもまた、滅びるであろう。その欲と共に生き、その欲を従えたものだけが神と共に生きるであろう。報いも祟りも一度のみと心得よ……」
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