シンサイ

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 玲奈のアパートにたどり着いたのは夕方だった。普段の3倍以上の時間を要していた。  玄関ドアを開けて見ると、そこも小間物はもちろん大きな家具も移動したり倒れたりと、地震の痕跡が残った空間だった。 「あらら……」  想像はしていたものの、こぼれる溜息を止めることができなかった。 「また、後片付けね」  玲奈が肩を落とした。 「あなた、昨日はどこから来たの? この様子じゃ、ここからではないわよね」 「ばれちゃったわね」  玲奈は小さな舌を出した。 「ガラスが割れていて危険だから、靴のままあがって」  彼女は質問に答えず、土足のまま部屋に上がった。その言葉で、春花は指の傷がうずくのを感じた。  小さな玲奈の部屋は二時間ほどで整理がついた。壊れたコップや家具は段ボール箱に入れて表に出し、代りに車で運んできた荷物を運びこんだ。  夜になると気温が急激に下がった。 「ストーブを持ってくればよかったわね」  春花と玲奈は、それぞれが毛布にくるまっていた。部屋はオール電化なので停電の時には暖房が使えない。 「これなら向こうにいた方が良かったね。便利すぎるのはだめなのよ」  春花は何者かを恨むように言って震えた。
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