18人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
玲奈のアパートにたどり着いたのは夕方だった。普段の3倍以上の時間を要していた。
玄関ドアを開けて見ると、そこも小間物はもちろん大きな家具も移動したり倒れたりと、地震の痕跡が残った空間だった。
「あらら……」
想像はしていたものの、こぼれる溜息を止めることができなかった。
「また、後片付けね」
玲奈が肩を落とした。
「あなた、昨日はどこから来たの? この様子じゃ、ここからではないわよね」
「ばれちゃったわね」
玲奈は小さな舌を出した。
「ガラスが割れていて危険だから、靴のままあがって」
彼女は質問に答えず、土足のまま部屋に上がった。その言葉で、春花は指の傷がうずくのを感じた。
小さな玲奈の部屋は二時間ほどで整理がついた。壊れたコップや家具は段ボール箱に入れて表に出し、代りに車で運んできた荷物を運びこんだ。
夜になると気温が急激に下がった。
「ストーブを持ってくればよかったわね」
春花と玲奈は、それぞれが毛布にくるまっていた。部屋はオール電化なので停電の時には暖房が使えない。
「これなら向こうにいた方が良かったね。便利すぎるのはだめなのよ」
春花は何者かを恨むように言って震えた。
最初のコメントを投稿しよう!