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帰宅してから寝るまで、母娘は部屋の片付けに取り組みながらも関心は原子力発電所の状況に向いていた。場合によっては、また別の安全な場所に逃げなければならないからだ。
「頼りになるのはスマホだけなのに、バッテリーの残りはあとわずかよ」
玲奈が言う。
「心細いわね」
春花は応じながら床をふいた。
2人は暖かな洋服を身に着け、ありったけの寝具やバスタオルなどにくるまって夜を過ごした。寒くても、肉体的な疲れが勝って、あっという間に眠りに落ちた。
夜中に春花が目覚めたのは、寒さと眩い明りのためだった。天井の蛍光灯が光を発していた。
「玲奈。電気が来ているわよ」
春花は感動を覚えながら玲奈をゆり起こした。普段は寝起きの良くない玲奈がすぐに目を覚ました。
「暖房を入れてよ」
言い終わる前に、玲奈がスイッチを入れた。
グオンと音が鳴って、エアコンの送風口から暖かい風が流れ出す。
「生き返るわね」
春花はホッとした。
「夜中も電力会社の人は仕事をしているのね」
玲奈が言うので、自分のことばかりを考えていた自分に、春花は恥ずかしさを覚えた。
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