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それからというもの、不思議な金色の光は夕方の同じ時間、同じ方角にたびたび現れた。クレナはその時間になるとバルコニーへ飛び出し、夢中になって空を見上げた。
「綺麗な光ね……。いったい何なのかしら」
ある日、クレナがいつものように空を見上げていると、どこかから聞き慣れない声が聞こえた。
「飛行機だよ」
「え?」
驚いて辺りを見回すと、クレナと同じ歳くらいの少年が、バルコニーのそばのシュガーメープルの木の枝に腰かけていた。黄色の木の葉の中、少年の白い肌と緑色の瞳は際立って美しく見える。
「あなた、シュガーメープルの妖精さん……?」
クレナの言葉に少年は「あはは」と吹き出し、慌てて口を閉じ人差し指を立てた。
「いけない、いけない。大きな声を出すと、お城の人に見つかっちゃうもんね」
少年の服はうす汚れていて、城の中の人間ではないことはクレナでもすぐにわかった。
「僕は妖精じゃないよ。アレクっていうんだ」
「アレクはどこから来たの? このお城は、決まった人しか入れないのよ」
「もちろん、こっそり忍び込んできたんだよ。このお城の周りには、シュガーメープルの木がたくさんあるでしょう? 僕、木登り得意だからさ、木から木へ飛び移ってお城の中へ入ったんだ」
得意げに笑うアレクに、クレナは目をぱちくりさせた。
「そんなことができるなんてすごいわ。こちらに来ることもできるの?」
「この木からちょっと遠いけど、やってみるよ」
アレクは枝の先で体を縮めると、勢いをつけて飛び上がる。彼の体は落ちる寸前でバルコニーにぶら下がると、軽い身のこなしでよじ登ってきた。
「こんばんは、クレナ様」
目の前にやってきた美少年は穏やかに微笑み、深々と頭を下げた。
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