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【六十四話】ドゥイ
オレはガレイズさん達と別れて再び怪物を探す。
ユートさんは無事なのか?
まさか花が大事過ぎて中庭にいるって事は──────···いや、ユートさんなら十分に有り得る。
一応、中庭に行ってみよう。
「?! ·····あれは···············」
ユートさんが居そうな中庭へ向かっていると少し先の通路でワダウの第一王子·····ドゥイが複数の従者を連れて何処かへ向かっている。
「彼奴ッ」
オレは奥歯を噛み締め、ドゥイ達の方へ全力で向かった。
「ドゥイ!!止まれッ」
オレの声でドゥイと五人の従者は立ち止まり「探す手間が省けた」と何故か笑っていた。
「何を笑っている?今、自分達が何をしているのか分かっているのか?!これは立派な反逆罪だ」
反逆者は極刑·····こんな事誰でも分かる事なのに···。
「黙れッ!全て···全て貴様のせいだッ!貴様さえ居なければ俺はテオ様の正妃か側妃になれたんだッ!愛してもらえたんだ!あんな奴と手を組む事も·····老いぼれた爺の愛玩人形にされる事も無かったのにッ···貴様のせいで全て台無しだッ!!!」
ドゥイが話し終わるのと同時に従者達が風魔法でつむじ風を発生させ、土魔法で床を崩す。
「ッ?!」
物凄い音と共に壁はヒビ割れ、床はバキバキに壊れると凸凹した高低差が目の前に広がっていく、、、
流石にテオの防壁でも瓦礫の中や土の中に埋もれてしまえばオレは窒息死する恐れがあるので瓦礫から瓦礫に動きつつ風魔法は防壁で防げた。
「チッ·····これでも駄目かッ」
「、」
まただ····················。
前回初めてドゥイに会った。
なのに何故そんな憎む様な目でオレを見るんだ?
テオがオレを選んだからか?
それに、あんな奴って··········やはりダイランの事だな。
普通に考えて·····。
「落ち着け!オレが居なかったとしても、お前が正妃か側妃になれたかは分からないだろ!それに·····テオに愛して貰えるかなんて余計分からない事だ。お前達はダイランに騙されている!今ならまだ引き返せる。だからっ────···
「五月蝿い!早く奴を黙らせろッ!!!!」
次は竜巻の様な凄まじい風の中に閉じ込められ、尖った岩が身体に向かって飛んでくるが防壁でオレは守られ竜巻が治まるのをジッと待つ。
「·············································。」
「···································。」
·····やがて、、、
術者の魔力が無くなって来たのか、全く見えなかった視界がうっすらと目視出来る様になり、オレは剣を構える。
魔法が使えるのはどうやら従者の内二人·····。
話を聞いて貰う為にも従者達には気絶してもらわないと、、、、
⎯⎯⎯⎯⎯⎯·····よしっ!
最初に土魔法を使う従者の方に向かい、剣の柄頭で鳩尾に一撃くらわせてから近くに居るもう一人の従者を蹴り飛ばす。そして風魔法の従者と残りの従者·····それにドゥイへ火の矢を首に突き付けた。
テオよりは魔法の展開速度は劣るがコレを防げるのはオレが知っている限り二人だけ···············。
「ドゥイ···今死にたくなければ会話に応じろ」
魔法を解除しないままオレはドゥイの前に行く。
どうやらドゥイはオレが火属性の魔法を使える事をダイランから教わっていない様だった。
だって·····知ってたらオレと相性が悪い水属性が使える従者を絶対に連れて来る筈、、、
「···············分かっ···た」と、黙っていたドゥイは頷いた。
「オレがグルファ国第一王子ルイス・ホガースなのは知っているか?」
「ああ」
「では何故国が滅んだか知っているな。お前達はオレの怨敵であるダイランと手を組み、大切な人達を傷付けた······到底許せるものでは無いが今はいい。正直に答えろ。あの怪物が何で出来ているのか知っているのか?」
「し、知らない·····っ、、言われた通りにしただけだ」
成程···だからあんな怪物が周りに沢山居たのに平然としていたのか、、、
「なら教えよう。ヴォーガ国で行われていた実験は人を怪物に変えるイカれたものだ。奴らに知能は無く有るのは破壊衝動のみ·····殺す方法は魔法で再生能力に勝る程の攻撃を与える事。··········オレは、、ダイランに犯されながら実の弟が怪物にされていくのを唯見ていた。お前に分かるか?親や弟、民を殺した相手に無理矢理犯され·····毎日毎日弟の叫びを聞きながらひれ伏して懇願し聞いて貰えない辛さをッ」
「······························。」
「愛されないからなんだ···老いぼれた爺の愛玩人形がなんだ··········愛だと言いながら両足を切断して犯す加虐趣味の主人じゃないだけ幾分かマシだ。お前が先程から話す事全てがオレには生温く聞こえる」
こんな事·····テオにしか話していない。
まあ、ヴォーガ国での事はハドラさんや他の人も魔道具で全て知っているだろう。。。
「お前達はダイランに利用されている。じゃなければ、オレが火属性の魔法を使う事をダイランが話していた筈だし怪物が誰彼構わず襲う事を伝える筈だ。分かっただろ?こんな事は無駄だ。今やめるのならテオに罪を軽くする様にお願いするし、その男の元に戻りたくないなら助ける。ドゥイ·····これ以上道を踏み外してはいけない」
オレは戦う意思はもう無いと剣を鞘に戻して魔法を全て解除した。
ダイランは何か狙いがあってドゥイやワダウ国の王を唆し、皆·····奴の罠にハマったんだ。勿論オレやテオ達も。
「五月蝿いッ!黙れ!黙れ!黙れぇええッ!!!!奴は言ったんだ!貴様がいなくなればテオ様は目を覚まされ俺だけを愛してくれるとッ」
ドゥイはそう言いながら剣を抜き、此方に向かってくるがオレは避けてドゥイの胸ぐらを掴み、頬を思いっきり殴る。
「いい加減にしろッ!!これは罠だ、まだ分からないのか?!人の心は簡単には変わらない。それに、オレがいなくなったら··········多分テオはっ」
間違いなくドゥイを殺し、差し違えてもダイランを殺す為だけに行動するだろう。。。
大切な国さえ捨てて·····。
「いや!絶対に変わる!!!そうじゃなければ俺は一体何の為にッ」
先程とは違い、ドゥイの表情が曇った。
「ドゥイ、王族に生まれた時からオレ達に自由は無い。そんな事···本当は分かってるだろ?好きな相手と結ばれる事自体普通は無いし貴族だってそうだ··········オレが異端なんだ。だが、テオだけは譲れない。その代わり·····お前の身の保証はオレが約束する。もうやめよう」
「 ···分かった」
「ドゥイ」
オレはドゥイの言葉に胸を撫で下ろす。
しかし、、、
「ふっ、ははっははははははは···············貴様は実に愚かだルイス・ホガース!!!既に此処を攻めた時点で俺達は覚悟が出来ている。それと奴も動き出した」
ドゥイは突然オレを馬鹿にした様に嗤い腕に注射を勢いよく刺す。
従者もドゥイに続いて次々と刺した。
「─────·····ドゥイッ!!!」
ドゥイ達は刺して直ぐ悲鳴の様な叫び声を上げ、身体の至る所がボコボコと膨れ上がり、どんどん巨大化と変形を繰り返し···あの怪物へと成り果てた。
「········································。」
「き·····ざま、、きざま殺すッ、ころ·····すころす」
ドゥイだった怪物が話す。
きっと、直ぐに言語さえ話さなくなる··········。
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