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共に生きる
ボートが潮の流れに乗ったことを確認すると、牽引船はロープを断ち切った。
すると突然あたりが白い霧に包まれた。
ボートは吸い込まれるように靄の中へと消えていく。やがて霧が晴れて視界が開けると、ガリバーの乗ったボートは跡形もなく消えていた。
「おそらくあれが時空の歪み……ガリバーは自分の世界に戻ったのね」
ピピは穏やかな外洋を見つめながら、ガリバーの無事を祈った。
生死の境をさまよっていたガリバーが丸二日漂流したのち、イギリス船に保護されたことをピピは知らない。
同様に資源の輸出の対価としてブレフ帝国から技術者を招き『ララパッド王国近代化の母』としてピピが後世に語り継がれる名君となったことをガリバーは知らない。
しかし二人は生涯にわたり『平行世界で冒険を続ける友人の存在を、お互い確かに感じていた。
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