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——抱き枕がいらなくなったベッドの上。
少しの疲労と名残惜しさが、お互いに離すことをまだ許さない。
葵の胸の上に頬を重ねる綾乃の肩を、腕枕をする腕が優しく包み込む。
「ねぇ……葵」
「んー?」
「葵は……今でも子供が欲しいって思ってるの?」
一件のことで有耶無耶になっていたことをどうしても確かめたくなった。
「そうだなぁ……もし子供ができるなら、男の子も可愛いけど……やっぱ女の子、かな?」
「そうなの? 私はどっちかと言えば、葵にそっくりな男の子がいいなー……なんてっ!」
「いーや、絶対女の子がいいっ! 世話好きで天真爛漫で、目がキラキラしててっ、プリンセスが大好きなお姫様みたいな女の子がいいんだって!」
「妙にリアルな娘像だね……」
「だろ? でも……」
ふと彼の顔を見上げると、肩を抱いていた大きな手に後頭部の髪を撫でられた。
「やっぱ、まだもうちょっとだけお前と二人きりでいたいかも。もう何にも邪魔されずに、お互いに心の底から幸せだって思える……そんな毎日を大切に過ごしていきたいんだ」
「そうだね……それもいいかもねっ」
——お互いに、必要不可欠な存在。
恋人として、これから一生添い遂げる伴侶として、かけがえのない人。
甘い甘〜い二人きりの時間には限りがあるかもしれないけれど、今……この時の1分1秒を何よりも大切にしたい。
喜びも、悲しみも、何もかも二人で分かち合いながら——。
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