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「へぇえ、さっすが桐矢くん! ビジネスセンスもコミュ力も高いからフリーランスでも十分やっていけそうだもん!」
なんだか横文字だらけだが、褒められると自分のことのように嬉しくなってしまう。
そして咲子は目を細めると、改めて綾乃に向かい直った。
「でもほんとにおめでとう……綾乃。あんなに素敵な人と結婚できちゃうなんて、幸せ者なんだからね、あんたっ!」
親友からの祝福の言葉。
それは当たり前に嬉しくて、実際に何もかもが順調に進んでいるはずなのだが……。
「うん……確かに私、すごく幸せなんだけど……」
「……ん? 何か問題でもあるの?」
綾乃の中で、ただ一つだけ恋人について気になる点があったのだ。
「私ね、ここに入社する前の葵のこと……ほとんど何も知らないの。美大生だった頃に彼女がいたのは知ってるけど、それ以前のこと……例えば中学とか高校の頃の話なんて、話題に出してもなんとなく話を逸らされるっていうか……」
「ふぅん……。要するに、桐矢くんの過去の恋愛経験が知りたいんだ?」
「う、うん……だって、気にならない? 自分の彼氏の……は、初めてのエッチがいくつの時で、どんな相手だったか……とかさっ!」
——好きだからこそ、相手の何もかもを知っておきたい。良い事も、悪い事も、全部。
「そうねぇ……確かに、秘密にされちゃうと余計に気になるわよねぇ」
咲子が共感してくれたことに安心した綾乃は、ますます食いつくのだった。
「でしょっ?! 話したくないような過去なら無理に話して欲しくはないから聞き出せずにいたんだけど、やっぱ気になってきちゃって……」
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