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そして、曇った表情で俯く綾乃を咲子はいつものようにフォローするのだ。
「桐矢くんって、ああ見えて意外とシャイなところがあるから単に恥ずかしいだけなのかもしれないでしょ?」
「うん……」
「それに……他の女の子とエッチしたことなんて、いくら昔のことでも綾乃の前で口に出したくないんじゃない? ……それだけ、あんたのことが好きで大切だってことじゃないのっ」
「そ、そっかぁ……そうだよね! ありがと、咲子っ!」
前向きなその意見に気を持ち直した綾乃が明るい顔を向けると、咲子はイスから立ち上がって……ニヤリと笑った。
「そうそう、だから心配いらないって! あの桐矢くんだもん、そうとうな経験積んできたのは間違いないだろうから。もし初エッチが小学生の頃だなんて言いだしたとしても……受け入れてあげなさいっ!」
「こらぁっ! 全然慰めになってなーーい!!」
ガハハと笑いながら、咲子は手を振ってカフェから出て行った。そして、そこに一人残された綾乃はまた小さくため息をつくのだった……。
——そしてその夜。
ピーンポーン。
「……ただいまぁ」
いつものように玄関の外でインターホンを1回鳴らしてから愛の巣の扉を開けると……
玄関で綾乃のことを出迎えたのは、一人の執事だった。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「……は?」
目をパチクリさせる綾乃の目の前で純白の燕尾服を纏い、胸に片手を当ててお辞儀をして立つその姿は執事そのもの。
しかし、その正体はというと……
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