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満足げにニコニコ笑って話す葵の姿を見て、綾乃は勘づいた。
「……ねぇ、そのクライアントって女の人じゃない?」
「え、なんでわかったの?」
「ちなみにあんたの顔も知ってて、『そのコスプレで写真撮って送ってくれ』……なーんて言われなかった?」
「ええっ?! な、なんでそんなことまでわかるんだよっ?!」
どうやら当たり、らしい。
それもそのはず、『絶対似合うはずだからぜひ着てみて下さい! 着るだけでいいんです! メイクなんて必要ありませんから!』……と、葵の背後から目を輝かせた女クライアントの声が聞こえてきた気がしたからだ。
「実は初めて顔合わせした時に宣伝用のレイヤーとしてプロデュースさせてくれって頼まれたんだけど、そんな暇もないから丁重にお断りしたんだ」
「やっぱりね……で、写真は送ったの?」
「さすがに写真なんて送らないって……ますます勧誘されそうで。まぁ、せっかくだからこうしてプライベートで楽しんでるんだけど」
それは、彼のその姿を見ているだけでとてつもなく納得できる話だった。
180㎝の身長としなやかに長く伸びる手脚にピッタリ合った衣装は「白執事」の名の通りに真っ白な燕尾服。黒も捨てがたいけれど、白の方が彼のイメージにより近い。
色素が薄く透き通るような肌にクッキリとした目鼻立ちは凛々しく、透明感のあるアッシュブラウンの艶髪はその白い衣装によく映えている。
そして、もちろんヘアスタイルもコスプレに合わせてスタイリングしたようで、まるでいつもと雰囲気が違う彼にドキドキしてしまう。
そう、要するに「白執事」が好きというわけでなくても、その破壊力は抜群というわけだ。
「(た、確かに……これはクライアントの女の人の気持ちもわからなくはないっ……!)」
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