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「今夜はトマトがたっぷりのスープでじっくり煮込んだ、柔らかくてジューシーなロールキャベツに……魚介と野菜の旨味がいっぱいのクラムチャウダーでございます、お嬢様。私も1ヶ月ぶりにやっとまともな食事ができて……じゃなくてっ、やっと料理ができて感激です」
仕事に忙殺されていたこの1ヶ月の間、メシマズ女の綾乃が作る手料理で何とか命を繋いできた葵。
久しぶりに仕事がひと段落した今、ようやくこうしてまともな物を口にすることができるのだ。そして、それは綾乃にとってもまったく同じことが言える。
「ロールキャベツにクラムチャウダーかぁ……美味しそう! 最近なんて毎晩『焦げてカチカチになった黒い焼きそば』とか、『イモが溶けてドロドロになった肉じゃが』とかばっかり食べてたんだもーん」
「は、ははは……(そう、そのせいで俺はまた1㎏痩せたんだ……)」
——そうして、テーブルに出されたまともな美味しいディナーを堪能した後は……
「あ、そうだお嬢様。またまた別のクライアントから頂いたイイ物があるんですよ」
「イイ物って?」
ソファーでお嬢様らしくくつろぐ綾乃の元に執事が持ってきたのは、ワイングラスが2つと……ワインボトルが入った木箱だった。
木箱から取り出されたワインボトルを持った葵が隣へと腰掛け、一気に距離が近づいた。
彼の手の中でクルクルと回されるワインボトルのボトルネックには真っ赤なリボンが結ばれていて、その見た目だけでそれが高級な贈り物であることがわかる。
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