友情リライト

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予想外の桜ちゃんの言葉に、私は目をパチクリさせた。私があっけにとられている間に、桜ちゃんは自分の机を運んできて、私の机と合わせた。それから私は桜ちゃんと一緒にお弁当を食べながら、お互いの創作の話で盛り上がった。 桜ちゃんから聞いた話は、全部意外なことだった。桜ちゃんは小説を書くのが趣味で、一緒に作品を作ってくれる友達を探していたこと。転校してすぐに、桜ちゃんは私の絵の趣味に気づいていたこと。そして桜ちゃんは以前から、私と話すチャンスを窺っていたこと。 桜ちゃんは鞄から青色のノートを取り出すと、私に自作の小説を見せてくれた。桜ちゃんの小説を読んだ私は、思わず言葉を失った。それくらい、桜ちゃんの小説は面白かった。さくらちゃんは胸の前で両手組むと、真剣な目で私を見つめた。 「私ね、のぞみちゃんの絵が大好きなの。だから私が小説、のぞみちゃんが絵を担当して、一緒に作品を作らない? 私たちがタッグを組んだら、きっと最高の作品ができるよ!」 私は自分の絵を褒められたことが、素直にうれしかった。そして桜ちゃんと仲良くなりたいなとも思った。けれど私は桜ちゃんの誘いに、すぐに頷くことはできなかった。 なぜなら私の絵と桜ちゃんの小説のレベルが、あまりに違いすぎたからだ。私は体をもじもじさせながら、小さな声で答えた。 「でも私、桜ちゃんみたいに上手くないから、きっと迷惑かけるよ」 桜ちゃんは私の手を握ると、首をブンブンと横に振った。 「そんなことないよ! のぞみちゃん、自信を持って。のぞみちゃんの絵には、みんなを幸せにできるパワーがある。私が保証するから、ね?」 桜ちゃんの言葉に、私の心に火が付いた。私は、力強く頷いた。 「ありがとう。私、やってみる!」 桜ちゃんは私に「よろしくね」と微笑んだ。それから私たちはペンネームを話し合い、私の発案で「桜のぞみ」になった。二人の名前をそのままくっつけただけの安易なものだったけど、私はそのペンネームがとても気に入った。
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