ディスプレイの向こうには人がいる

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〈そうですね。コブラツイストの作画って絡み合うから難しいものですよね。失礼しましたm(_ _)m〉と、SNS上には珍しい平身低頭に徹し謝るコメントに青年は困惑してしまった。 プロレスアニメは終わりを迎えていた。EDテーマが流れる中、青年は先程のコメント投稿者に返信の返信を送ることにした。 〈こちらも先程は言いすぎました。スマソ(インターネット上で軽く謝る意のコメント)〉 すると、五秒もしない内に返信されてきた。 〈いえいえ、本物のサイクロン・アナヤのコブラツイストに比べて()めが甘いのが気になったもので、作画班もこのあたり頑張って欲しかったかなーって〉 青年はサイクロン・アナヤのことを知らなかった。それ故に指が一瞬止まってしまう。今はパソコンを触っているのだから、すぐに検索をかければいい。青年は新しいタブで検索エンジンを開き、サイクロン・アナヤの名で検索をかけるのであった。 サイクロン・アナヤ。ベネズエラ出身のアメリカのプロレスラーでコブラツイストの創始者。正式名称はアナヤズ・ストレッチ。いつしか、アナヤズ・ストレッチを多くのレスラーが使うようになり、蛇が巻きついているように見えるこの様から「コブラツイスト」と言う名前で定着するようになった。 青年にとっては全てが青天の霹靂、知らないことばかりで「へー」と感心することしか出来なかった。しかし、このような名前を知っている返信者は何者だろうか。プロレスファンか何かだろう。そんなことを考えながら寝に入るのであった。
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