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青年は一流商社Aに入社し、社会という大海に漕ぎ出した。始めこそ、順風満帆な滑り出しだったのだが、新卒の社会人はまだまだ「お客様」の扱いをされる時期故に優しくされていて当然である。
しかし、時が経てば「お客様」から「一端の社会人」として扱われるようになる。同じ社員であれば扱いも厳しくなるもので、順風満帆だった青年の社会人生活は兎が跳ねる程の荒波へと様変わりしていくのであった…… 青年は社会の厳しさを知り、心が折れようとしていた。
運悪く、これから何人も会うであろう怨憎会苦のうちの一人が上司となってしまい苛烈な扱いを受けた上に、その上司の仕事上の失敗の罪を覆い隠せられた青年はその責を負い、閑職へと追いやられてしまった。
その閑職は、窓際にあった。窓際の日の当たる席を与えられ、与えられた仕事はそこに置かれたインターネット上でのリサーチ業務であった。前までの第一線にいた青年にとっては畑違いでもので「合わない仕事」であった。それは深夜に至ることも珍しくはない。
件の上司も「ネット見るだけの楽な仕事でいいねえ?」と忙しい合間を塗って嫌味を言いに来るぐらいである。同僚までもが「もうあいつは出世の芽もねぇやつだ」と、飲みに誘うこともなくなってしまった。
「成程、さっさと辞めろってことか」
ここは追い出し部屋だ…… 青年も仕事中に溜息を吐く回数が増えてきた。それを偶然に上司に見られようものなら「仕事中にタルそうに溜息を吐くとは何事だ!」と大目玉を食ってしまう。
やめたい。青年は毎日このように考えるようになっていた……
すると、閑職の上司が青年に話しかけてきた。
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