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「なぜか、ここに瞬間移動しちゃったというワケね? しかも、寝落ちしながら」
「う、うん」
「すっごーい! ホントねえ、あんたって凄い超能力者なのね!?」
意外なことに、この女の子は簡単に僕の話を信じた。
「そうだよ、もう何でもできちゃうよ」
一時的にではあるが、筋肉モリモリの体に変化することもできた。
「ね、ね? いつから超能力使えるようになったの? やっぱり、赤ちゃんの頃から?」
「ん~……、超能力者になるための努力を18歳になるまで続けてきたんだ。どんなに努力しても、18歳になる以前は超能力なんてまったく使えなかった。18歳になって、やっと超能力が開花したのさ」
「努力? してたんだ?」
「うん、そうだよ」
僕がまず最初にやったことは、念力の訓練だった。この世界には、念じるだけで物を動かしたり壊したりする超能力者の話はあるのだが、それはあくまでもフィクションの世界の話であって現実ではない。
「できるようになったのね?」
驚き目を丸くして僕に聞く女の子。
僕は笑って返事をした。
「ああ。努力を続けて、18歳になったら、ついにできるようになったんだ」
「…………すごい。石の上にも3年。コケの一念岩をも通す…ってやつね」
「それ、褒め言葉か? とにかく、僕は最初に念力を覚えようと思った。そのワケは、それは特に集中力が大事な超能力だと思ったからなんだ。それこそ、漫画みたいに『気合を入れればできる!』なんてレベルじゃないんだ。座禅を組んだり、滝に打たれた」
「こ、高校3年間という二度とない青春時代を、そんなことに使ったの?」
「僕にとっては――一度しかない現実が集中力の高まりに役立ってくれた」
「一体なんでそこまでして……。家庭や学校に不満があった?」
女の子の不安気な問いかけに、僕は首を左右に振った。
「ううん。何かと向き合って努力したかったんだ。高校3年間を使ってね。それが超能力者になるための努力って、そんなのバカらしいと思うだろう?」
女の子はコクリと首を縦に振った。
「野球のボールくらいがピクリとでも動けばよかったんだよ」
僕がそう言うと、近くに置かれていたコンクリートのブロック片が突然跳ねて、コンクリートの床の上でゴンゴンと音を立てて踊った。
「ここまでできるようになるとは思わなかったけどね」
「それで……」
女の子が次に何を問い掛けてくるのか?
そんなことは超能力を使わなくても僕にはわかった。
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