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「18歳から先を超能力者として生きていくのかって聞きたいんだろう? それはないな。僕は生きていくために超能力は使えないよ」
僕はきっぱりとそう答えた。
「どうして?」
女の子の表情が曇る。
「将来の役に立つためだからって思いながらじゃなかった。高校3年間の最後を笑顔で終わらせるために、頑張った結果がそれなんだよって笑うために、努力してきた」
「満足のいく結果は得られた?」
「ううん。まだね。頑張ったよ、できるようになったよって笑顔を見せに行かなくちゃ。満足するのはそのあとだ」
「どこへ行くの?」
「伊藤志保って女の子のところへ――」
「どういう子?」
「中学の時までうちの隣に住んでた子でね。その子、中学3年の頃に、事故で足の大怪我をして、家も引っ越しちゃったんだ」
女の子は真剣な表情で僕の話に耳を傾けてくれた。
好きな子だったとか、かわいかったんだとか茶化されることはない。
見ず知らずの相手だから語れるのだ。
「それからも、僕らずっと連絡は取り合っていたのさ。あの子、新体操が好きで、オリンピックの選手になることが夢だったんだよね。それが、事故で足を……。でね、あの子はそれからリハビリずっと頑張っていたんだ。それは両足で歩けるようになるためだったんだけど、あの子、一度しかない高校3年間を使ってやることがこれ、リハビリなのかなって悩んだ時期もあったんだよね。そこで僕は考えたわけさ」
「何を?」
「努力をした先に、それに見合った笑顔が必ずあるってさ!」
僕は空を仰ぎ見た。青かった。降り注ぐ太陽の光を受け止めるように両手を広げた。
「18禁って言葉知ってる?」
「え? あ、まあ、いろんな意味で」
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