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携帯を見つけてから一週間後、おばあちゃんは灰になった。
火葬炉に運ばれる棺を見ても、私は涙を流さなかった。未送信のメッセージを読んだあと、後悔と悲しみ、自責の念で泣き続けたせいで、涙はとうに枯れていたからだ。
学校もしばらく休んだが、元々心配をかける人もいない場所だったので、足が遠のくのに躊躇いはなかった。母から事情を訊かれることもなかった。私が祖母を失くして意気消沈しているのだと思っていたのかもしれないし、母自身が心細かったのもあったのかもしれない。
いずれにせよ、私の悲しみは彼女が想像する二倍以上の重さを持っていた。祖母と友人、この二人を同時に失った私は、いまはただ一人きりになりたかった。
忌引きが終われば、また学校に行かなくてはならない。いくら悔やんでも、毎日は続いていくからだ。前に進めなくなった人は置き去りにしていくしかない。あるいは、置き去りにされたのは私や母のほうなのかもしれない。
それでも、そんな毎日を送り続けるしかないのだ。
深い悔恨のなか、私は自分の携帯から<QuicQ>を削除した。そう決断できるまで、まるで同極同士の磁石のように、指先が画面に触れることを拒んでいた。
アイコンが消えるまでのわずかな時間、私の胸は茨が巻きついたように痛んだ。
ごめんねミナミちゃん。
ごめんね、おばあちゃん。
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