第10話 純矢さんからのサプライズ

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第10話 純矢さんからのサプライズ

歓迎会開始から約2時間が経過し、そろそろお開きの時間になったようだ。 純矢さんは、相変わらず顔を赤くして、俺の肩に腕を回している。 「湊、そろそろ出るか?」 てっきり帰るのかと思い、 「うん、分かった。」 そう返事した。 俺の返事を聞き、純矢さんは立ち上がり、みんなにお開きを伝えた。 「今日はありがとな!とりあえず一旦締めるが、呑むやつはこのまま呑んでくれ(笑)呑み過ぎひんようにな~」 そう言って、俺の肩に腕を回したまま出口に向かった。 出口を出ると、店の前にはタクシーが待機していた。 タクシーに立っていた舎弟が、 「組長!湊さん!お疲れ様でした!どうぞごゆっくり!」 そう挨拶してくれた。 『ごゆっくり…?』 「あぁ、おおきにな(笑)」 疑問に思いながらも、舎弟に会釈をしてタクシーに乗り込んだ。 ドアが閉まり、純矢さんが目的地を運転手に伝える。 「運転手さん、プリンスホテルまで…」 「かしこまりました。」 『ん?ホテル?』 そう思い純矢さんを見ると、何かを企んでいるような顔で、ニヤッと笑う。 「今夜は…家には帰らへんで?(笑)」 そう言うと、タクシーはプリンスホテルへ走り始めた。 車で走ること約30分、タクシーはホテルのエントランス前で停車した。 「おおきに~」 そう言って純矢さんは俺をタクシーから引っ張り出した。 訳も分からずに純矢さんに付いていく。 エントランスに入ると、これまた豪華な内装で、酔いが軽く抜けていくような気がした。 純矢さんはフロントに声をかける。 「今夜1泊予約してた斉藤だが…」 『ん?斉藤?長谷川じゃないの?』 もう全てが疑問だらけだった。 フロントの方も、 「斉藤様ですね、お待ちしておりました。お代はいただいておりますので、このままお部屋にお進み下さいませ。」 そう言って、ルームキーを2枚純矢さんに渡した。 「おおきに♪」 純矢さんは俺の疑問をよそに、とても上機嫌だった。 「さぁ、行くで~♪」 そう言って俺の手を握った。 訳も分からず、宿泊するであろう部屋の前までやってきた。 純矢さんは持っていたルームキーを使ってドアを開け、俺を先に入れた。 俺はゆっくりと部屋に入っていく。 ものすごく広い。 入った部屋はスイートルームのようだった。 ゆっくりと中に入っていくと、テーブルの上にあるものを見つけた。 シャンパンとグラスが2つ置いてある。 驚いて純矢さんを見ると、 「ビックリしたやろ?(笑)」 そう言って、俺を抱き締める。 そして耳元で言った。 「湊、ハッピーバースデー♪」 そう、この日は俺の誕生日だった。 正直、色んな事が短期間で起こり過ぎて、自分の誕生日を忘れていた。 「ありがとう!でも何で誕生日知ってるの?」 すると、またニヤッと笑った。 「湊が組の病院に来た時に、身分証見たって言うたやろ?」 『それでか…』 これまでの疑問が消え去った。 すると純矢さんは、持っていたセカンドバッグの中から、小さい箱を取り出した。 そして、俺の前にひざまづく。 俺が気が動転していると、純矢さんは持っていた箱をゆっくり開けた。 その箱の中には、シンプルだがとても綺麗な指輪がちょこんと入っていた。 「湊…、これからも一緒にいてくれへんか?」 少し緊張した顔で、純矢さんがそう言った。 俺は誕生日を覚えていてくれた嬉しさと、このサプライズで、自然と涙が出てきた。 涙が頬を伝う感覚を感じながら、 「はい…お願いします。」 俺は泣きながらそう言った。 すると純矢さんはニコッと笑い、指輪を取り出した。 そしてその指輪を俺の左手薬指にはめる。 なんとピッタリだった。 「良かった。ピッタリやで♪」 指輪のサイズがピッタリなんて事があるのか? そう思い純矢さんに聞いた。 すると、また笑いながら、 「この間、湊が可愛い顔してリビングで寝とる時に、こそっと計らしてもろた(笑)」 何とも自信満々にそう言った。 やることがカッコ良過ぎた。 すると純矢さんは、セカンドバッグから同じ箱を取り出し、俺に渡した。 「ワシにも…はめてくれへんか?(笑)」 それを受け取り箱を開けると、俺がはめてもらった指輪と同じデザインの指輪が出てきた。 その指輪を取り出し、純矢さんの左手薬指にはめる。 こちらもピッタリとはまった。 すると、純矢さんは俺を抱き締めた。 「湊、愛してんで…」 そう静かに言った。 「本当にありがとう…」 こんなに幸せで良いのかと思うと、また涙が出てきた。 泣いてる事に気づいたのか、純矢さんはあの日のように涙を手で拭い、俺に優しくキスをした。
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