83人が本棚に入れています
本棚に追加
第10話 純矢さんからのサプライズ
歓迎会開始から約2時間が経過し、そろそろお開きの時間になったようだ。
純矢さんは、相変わらず顔を赤くして、俺の肩に腕を回している。
「湊、そろそろ出るか?」
てっきり帰るのかと思い、
「うん、分かった。」
そう返事した。
俺の返事を聞き、純矢さんは立ち上がり、みんなにお開きを伝えた。
「今日はありがとな!とりあえず一旦締めるが、呑むやつはこのまま呑んでくれ(笑)呑み過ぎひんようにな~」
そう言って、俺の肩に腕を回したまま出口に向かった。
出口を出ると、店の前にはタクシーが待機していた。
タクシーに立っていた舎弟が、
「組長!湊さん!お疲れ様でした!どうぞごゆっくり!」
そう挨拶してくれた。
『ごゆっくり…?』
「あぁ、おおきにな(笑)」
疑問に思いながらも、舎弟に会釈をしてタクシーに乗り込んだ。
ドアが閉まり、純矢さんが目的地を運転手に伝える。
「運転手さん、プリンスホテルまで…」
「かしこまりました。」
『ん?ホテル?』
そう思い純矢さんを見ると、何かを企んでいるような顔で、ニヤッと笑う。
「今夜は…家には帰らへんで?(笑)」
そう言うと、タクシーはプリンスホテルへ走り始めた。
車で走ること約30分、タクシーはホテルのエントランス前で停車した。
「おおきに~」
そう言って純矢さんは俺をタクシーから引っ張り出した。
訳も分からずに純矢さんに付いていく。
エントランスに入ると、これまた豪華な内装で、酔いが軽く抜けていくような気がした。
純矢さんはフロントに声をかける。
「今夜1泊予約してた斉藤だが…」
『ん?斉藤?長谷川じゃないの?』
もう全てが疑問だらけだった。
フロントの方も、
「斉藤様ですね、お待ちしておりました。お代はいただいておりますので、このままお部屋にお進み下さいませ。」
そう言って、ルームキーを2枚純矢さんに渡した。
「おおきに♪」
純矢さんは俺の疑問をよそに、とても上機嫌だった。
「さぁ、行くで~♪」
そう言って俺の手を握った。
訳も分からず、宿泊するであろう部屋の前までやってきた。
純矢さんは持っていたルームキーを使ってドアを開け、俺を先に入れた。
俺はゆっくりと部屋に入っていく。
ものすごく広い。
入った部屋はスイートルームのようだった。
ゆっくりと中に入っていくと、テーブルの上にあるものを見つけた。
シャンパンとグラスが2つ置いてある。
驚いて純矢さんを見ると、
「ビックリしたやろ?(笑)」
そう言って、俺を抱き締める。
そして耳元で言った。
「湊、ハッピーバースデー♪」
そう、この日は俺の誕生日だった。
正直、色んな事が短期間で起こり過ぎて、自分の誕生日を忘れていた。
「ありがとう!でも何で誕生日知ってるの?」
すると、またニヤッと笑った。
「湊が組の病院に来た時に、身分証見たって言うたやろ?」
『それでか…』
これまでの疑問が消え去った。
すると純矢さんは、持っていたセカンドバッグの中から、小さい箱を取り出した。
そして、俺の前にひざまづく。
俺が気が動転していると、純矢さんは持っていた箱をゆっくり開けた。
その箱の中には、シンプルだがとても綺麗な指輪がちょこんと入っていた。
「湊…、これからも一緒にいてくれへんか?」
少し緊張した顔で、純矢さんがそう言った。
俺は誕生日を覚えていてくれた嬉しさと、このサプライズで、自然と涙が出てきた。
涙が頬を伝う感覚を感じながら、
「はい…お願いします。」
俺は泣きながらそう言った。
すると純矢さんはニコッと笑い、指輪を取り出した。
そしてその指輪を俺の左手薬指にはめる。
なんとピッタリだった。
「良かった。ピッタリやで♪」
指輪のサイズがピッタリなんて事があるのか?
そう思い純矢さんに聞いた。
すると、また笑いながら、
「この間、湊が可愛い顔してリビングで寝とる時に、こそっと計らしてもろた(笑)」
何とも自信満々にそう言った。
やることがカッコ良過ぎた。
すると純矢さんは、セカンドバッグから同じ箱を取り出し、俺に渡した。
「ワシにも…はめてくれへんか?(笑)」
それを受け取り箱を開けると、俺がはめてもらった指輪と同じデザインの指輪が出てきた。
その指輪を取り出し、純矢さんの左手薬指にはめる。
こちらもピッタリとはまった。
すると、純矢さんは俺を抱き締めた。
「湊、愛してんで…」
そう静かに言った。
「本当にありがとう…」
こんなに幸せで良いのかと思うと、また涙が出てきた。
泣いてる事に気づいたのか、純矢さんはあの日のように涙を手で拭い、俺に優しくキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!