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定年まであと一年を残して退職した。二年前にパーキンソン病という難病にかかり、入院、病気休暇、復帰、病気休暇、休職、入院、自宅療養と仕事にならず、休職は延長せずに退職した。
家のローンをかかえて収入がなくなれば、路頭に迷うしかない。妻と娘は家から出ていった。パーキンソン病とは、身体が徐々に動かなくなる病気で治すことはできない。寝たきりの私を見て働く気がない人の面倒はみれないと妻は言った。リハビリをしようにも、進行を遅らせる薬を飲むと、眠くなり寝たきりにならざるを得ないのだ。
家は駅まで遠く、近くに森があるようなところで車がなくては生きていけない。一台しかない車は妻のものだ。妻に出ていかれたら生きていけない.しかも私は家事がまったくできない.
『人でなし。こんな状態のまま置き去りか。』
叫んだつもりが力無く小さな声しか出なかった。
『当たり前でしよ。この三十年間いい事なんかなんにもなかった。こんなに痩せて太ることができなくなった。私の三十年間を返して。』
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