憧れは巡る

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 先輩に初めて会ったのは、中学校の入学式だった。  在校生代表として、当時生徒会長であった先輩が、新入生歓迎のあいさつをしている姿は堂々としていて、今でも印象に残っている。  初めて先輩と話したのはそれから数カ月後、学校のゴミ捨て場だった。  あまりクラスに馴染めなかった私は、その日の掃除当番に半ば押し付けられるようにゴミ捨てを任された。  断ることなど出来なかった私は、多分、暗い顔をいていたんだろう。  そんな私の様子に気づいてか、先輩は優しい笑顔を浮かべて話しかけてくれた。  先輩の言葉は、擦り切れていた私の心に深く染み込んできた。  その時に、先輩は私にとっての特別になった。  一目惚れに近いだろうか。だけど、それは決して恋愛感情ではない。強いて言えば、羨望とか憧れとか、そういった感情に近かったと思う。  私もあなたのようになりたいと。
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