act.2 秋は憂鬱なわけで

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「さぁて……少しは、気が晴れた?」  趣味の画像投稿アプリにパフェの画像を上げながら、マーヤはあたしの機嫌を窺う。 「無理。根本的には解決してないじゃん」 「それこそ無理言うなよ」 「あー、この季節、憂鬱だぁ」  分かってる。2ヶ月後、11月の頭には、あたし達が通う中学校で文化祭があり、あたし達のクラスの2Bは演劇を出し物に選んだってこと――それは3時間前の決定事項で、今更あたし1人の反対意見なんか通らないってことも、さ。 「観念しな。小道具係になれたのは、僥倖じゃん」 「相手がジャンケン弱い結城(ゆうき)さんで助かったよ」  ホント、危なかった。あの時、を出さなけりゃ、「赤の兵隊・その3」を演じなきゃならないところだった。 「あはは。しばらくを丁寧に扱わなきゃね」 「訳分からん」  スマホのバイブに気づいて画面を見ると、友子(ともこ)さんからのLINEが届いている。 『美姫さん、夕食はいかがなさいますか? バニーズで召し上がって来られますか?』  あ、忘れてた。今朝、「バニーズでパフェを食べてくるから、夕食は分からない」って言ったんだっけ。 「マーヤ、ご飯食べてく?」 「いや、帰る。今日、うちのママのハンバーグだもん」 「あっそ」  母親の手作り料理が迎えてくれる。そんな経験、1度だってあたしにはない。ま、天下の大女優姫川星華(ひめかわせいか)がキッチンに立つ姿なんて、ドラマの撮影現場でもなけりゃ見られるもんじゃないけど。 「ハンバーグか。あたしも、友子さんに頼もうかな」 「え、今から?」 「作り置きを冷凍したヤツがあるでしょ」 「そっか。“スーパーメイド友子さん”に不可能はないか」 「なに、そのダッサいネーミング」 「うっさいわ。じゃ、出るかぁ」 『家で食べます。出来れば、ハンバーグ希望』  素早くLINEに返事して、スマホを鞄に放り込むと、あたし達は席を立った。  期待通り、マンションに帰ると友子さんは、熱々の鉄板プレートに乗った“お手製デミグラスソースのハンバーグ”を食卓に出してくれた。あたしの好きなコーンポタージュスープも忘れない。ホント、完璧。実は、彼女の中身はAIロボットなんじゃないかしら。
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