1/5
前へ
/45ページ
次へ

パチクリっと目が覚めるとオレは布団を蹴飛ばし、勢いよく起き上がった。 (どうだ、元のアパートか!) しかしそこは実家のオレの部屋であった。 (はぁー、ダメか) 1999年のままだった。 時計に目をやると7時半。 土曜日なのでアラームはセットしていない。 リビングに降りると、やはり若い母が 「あ、起きたの」 と、以外なテンションで言った。 いつもの土日なら、も少し寝坊しているからだ。 台所で前かけを外し、せかせか動いている母は 「お母さんサ、今日1日パートで、お父さんも休日出勤で出ちゃったから、お昼は一応作っておいたから、オネーちゃんとチンして食べてよ」 とオレに向かって言うと、バアちゃんが 「私もチョチョイと何か作ってあげるから大丈夫よ、セカ子さん」 と、母に言った。 「すいませんねー、おかあさん」 気を使った言い方をした母は、隣の和室で出掛ける支度をしだした。 2階から、ボサボサの寝癖のまま降りて来たネーチャーンと、バァちゃんと朝食を取っていると家電話が鳴った。 近くに座っていたネーチャーンが取り、対応したが、すぐ 「裕一、アンタ」 と、オレに受話器を向けた。 「オ、オウ…」 受話器を受け取ると、ネーチャーンが小声で (何!何!彼女出来たの) と、オレの肩越しにニヤけながら呟いた。 (うるせぇ、違うわい!) と軽くボヤキ、受話器を耳にあてた。 相手は判っている。 「オハヨ。実年齢35の笠井君だよね…」 関村は、オレがどうなっているのか、確認から入った。 「うん、35歳、独身の笠井だよ…ガッカリだね…」 「そうね……」 受話器の向こうの彼女の落胆は、その沈んだ声で伝わって来た。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加