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パチクリっと目が覚めるとオレは布団を蹴飛ばし、勢いよく起き上がった。
(どうだ、元のアパートか!)
しかしそこは実家のオレの部屋であった。
(はぁー、ダメか)
1999年のままだった。
時計に目をやると7時半。
土曜日なのでアラームはセットしていない。
リビングに降りると、やはり若い母が
「あ、起きたの」
と、以外なテンションで言った。
いつもの土日なら、も少し寝坊しているからだ。
台所で前かけを外し、せかせか動いている母は
「お母さんサ、今日1日パートで、お父さんも休日出勤で出ちゃったから、お昼は一応作っておいたから、オネーちゃんとチンして食べてよ」
とオレに向かって言うと、バアちゃんが
「私もチョチョイと何か作ってあげるから大丈夫よ、セカ子さん」
と、母に言った。
「すいませんねー、おかあさん」
気を使った言い方をした母は、隣の和室で出掛ける支度をしだした。
2階から、ボサボサの寝癖のまま降りて来たネーチャーンと、バァちゃんと朝食を取っていると家電話が鳴った。
近くに座っていたネーチャーンが取り、対応したが、すぐ
「裕一、アンタ」
と、オレに受話器を向けた。
「オ、オウ…」
受話器を受け取ると、ネーチャーンが小声で
(何!何!彼女出来たの)
と、オレの肩越しにニヤけながら呟いた。
(うるせぇ、違うわい!)
と軽くボヤキ、受話器を耳にあてた。
相手は判っている。
「オハヨ。実年齢35の笠井君だよね…」
関村は、オレがどうなっているのか、確認から入った。
「うん、35歳、独身の笠井だよ…ガッカリだね…」
「そうね……」
受話器の向こうの彼女の落胆は、その沈んだ声で伝わって来た。
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