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オレは35歳。
高校を卒業すると、自動車鈑金塗装工場に入社し、勤続17年。
今も好きな車を相手に尽力している独身貴族である。
いまは実家から車で1時間半ほどの、同じC葉県内Y市の職場の近くのアパートに1人で住んでいる。
なので高校まで暮していたこの家に居るハズは無い。
夢か。イヤ、ハッキリしている。
夢でもまぼろしでもない。
呑んて、車で1時間半かけて実家に帰るハズもない。
それじゃ飲酒運転である。
確か店からアパートまで歩いて帰って、ちょっとテレビ見て、電気つけっぱで、そのまま寝入ってしまってると思う。
次の日に、この場所に居るのはおかしいのだ。
目を強く擦り、頭を2、3度振った。
しかし状況は変わらない。
オレが高校まで住んでいた部屋、当時のそのままである。
と
「裕一〜、起きなさいよ〜、ガッコ遅れるよ〜」
女性の声が下から聞こえた。
「だ、誰だ?」
ベッドから起き上がり、部屋から出ると、1階のリビングへ降りた。
台所に、コチラに背を向けて立っている女性がいた。
「あの〜」
オレか、ソロソロっと小声をかけると
「もう。早く起きなさいよ。いつもいつも」
と、振り向いた女性、それはオレの母親だった。
「えっ?かあちゃん?」
だが母親にしては違和感があった。
随分若い。これではオレとそう、歳変わらないじゃないの。
母は今年60のハズだが、目の前の母は、どう見ても40前後だ。
不思議だ。
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